2014年6月8日日曜日

梅雨といえば・・・②

前回のお話の中で『安高天玉(やすたかてんのう)』『日車天玉(ひぐるまてんのう)』といった名前の方がでてきました。ここで注目して頂きたいのが、「天玉」の「玉」という字です。「あれ?『天王』の間違えじゃないの?」と指摘される方もよくいらっしゃいますが、これには理由があるのです。
この「玉」は『如意宝珠(にょいほうじゅ)』を指します。『如意』とは「あらゆる願いを叶える」という意味で、仏教用語です。孫悟空のお話でおなじみの如意棒の『如意』も同じ意味です。つまり如意宝珠は「あらゆる願いを叶える珠(玉)」という意味で神様や菩薩様が手に持っていらっしゃったり、口にくわえたりされています。実は、龍が持っている玉もこの如意宝珠なのです。
ちなみに、現在の「天皇」という称号は元々「天王(てんおう)」と呼ばれており、七世紀頃に現在の称号になりました。
つまり、読み方は同じですが、人間界の中で一番尊い存在は「天王」で、神仏界で如意宝玉をお持ちになっている尊い方々を「天玉」と表しているのです。

龍っていったい何だろう?

これも前回のお話に関連したものになりますが、「龍」ってどんなものでしょうか?
そもそも「龍」という字が旧字体ですが、字としては「竜」の方が古く、象形文字から使われています。
「竜に九似あり」と言われ、〈角=鹿〉〈頭=ラクダ〉〈眼=鬼〉〈耳=牛〉〈うなじ=蛇〉〈腹=蜃(蜃気楼を出すと言われる伝説の生き物)〉〈鱗=魚〉〈爪=鷹〉〈掌=虎〉にそれぞれ似ており、口辺に長い髯をたくわえ、喉下には一尺四方の逆鱗があり、顎下に宝珠を持つと言われています。また秋には淵の中に住み、春には天に昇るとも言われています。
龍は世界各地に様々な形で登場していましたが、日本の龍は中国から伝えられ、元々日本にあった蛇神信仰と融合したものです。古来より日本で蛇は、雨を操り大地を潤す豊穣のシンボルとして広く信仰されていました。その為、龍も水の神として各地で民間信仰の対象となりました。
中国で龍は帝王を象徴するものとされ、帝王にまつわるものには「竜」がつくことが多々あります。〈帝王の姿=竜影〉〈帝王の頭=竜頭〉〈帝王の衣服=袞竜(こんりょう)〉等です。更には爪の数で身分も分けられ、〈五本=皇帝〉〈四本=貴族〉〈三本=士族〉〈二本=臣民〉〈一本=卑民〉を守護すると言われていました。
一方日本では、身分よりも中国の四神(四方角を司る霊獣)の観念の方が広まり、「東の青竜」として重視されるようになりました。平安時代以降には、仏教の隆盛によって仏法の龍が広く普及し、武具の装飾だけでなく、寺院建築や仏具の装飾にも使われるようになりました。ちなみに常光寺の装飾でも所々にありますので探してみて下さいね。仏教の中で龍神に雨乞いをしたお話は多々あります。そして次第に「龍神信仰」は仏教の浸透と共に「龍王」として更に発展していきました。

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