2014年4月19日土曜日

正五九祈祷

正五九祈祷(しょうごくきとう)

古来中国では一・五・九月を神通月(じんつうづき)と呼んでいました。人間の善悪の行為を映し出す「業鏡(ぎょうきょう)」が私達が過ごしている有り様を照らし出して、そこで行われている良い事と悪い事の全てを仏教の守護神の方々が「業鏡」に映し出して見るのです。現代でいうと役所の監査のようなものですね。したがって、この「業鏡」が私達に向けられる一・五・九月には少しでも悪い事はしないように、又どんなに小さな事でも良い行いをして現世でも死後も苦しまなくてすむように非行を謹んで過ごす事が行われてきました。これが後に日本にも伝わり、一・五・九月にお参りや祀りごと・祈願が盛大に行われるようになりました。神通月には神様が私達人間に特に目を向けて下さっている月でもありますので、御払いや祈願をすると効果も倍増すると云われており、古く日本でも天皇から一般の方々までこの三つの月に特に熱心に祈願されていました。それが「正五九祈祷」です。

日蓮宗におきましては寒中百日間、一日七回水をかぶり、朝・夕にわずかな粥をすすり生命の限界にせまる七百年の伝統を誇る日蓮宗秘伝の大荒行を成満されたお上人のみが御祈祷を行う資格をもっております。もちろん常光寺では随時祈願を受け付けております。また最上様も祀られておりますのできたる5月2日の最上稲荷開運祈願会において祈願されてみてはいかかですか。

2014年4月13日日曜日

天上天下唯我独尊

前回に引き続きお釈迦様の生誕の話をします。

お釈迦様の本名は「ゴーダマ・シッダールタ」です。お父さんは古代北インドにあったシャカ族の王様「シュッドーダナ」、お母さんは「マーヤ夫人」といいます。お釈迦様は王子様で、将来王様になる事が約束された方だったのです。現在の「お釈迦様」という呼び名は、いわゆる通称で、「釈迦」はこの部族の名前からきています。正式名称といわれている「釈迦牟尼仏」という名前は「シャカ族の牟尼(=聖者)である仏様」という意味なのです。また「釈迦牟尼世尊(世尊=福徳のある人)」を略して「釈尊」といったり、「釈迦如来(如来=真理を悟って体現した人)」と呼ぶこともあります。
お釈迦様は約2600年前にお生まれになったそうですが、その生誕に関してもとてもミラクルな伝説が沢山残されています。

お釈迦様のお母さんであるマーヤ夫人は35歳のある夜」、天から六つの牙を持つ白い象が降りてきて、右脇より体内に入る夢を見ました。その時大地が激しく振動し、数日後に自分の体に新しい命が息づいた事を知ったのだそうです。

4月8日、マーヤ夫人は出産の為に生家に向かう途中、お城から30㎞程離れたルンビニーという花園を通りかかった際、美しく咲き誇る無優華(あそか)の花に手を伸ばしました。その時に、右脇からお釈迦様がお生まれになったそうです。

驚くのはそれだけではありません。普通の赤ちゃんは生まれると大体「オギャー!」から始まります。ところが、お釈迦様は生まれるとすぐに、東西南北にそれぞれ7歩ずつ歩き出し、右手で天を指差し、左手で地を指差して「天上天下唯我独尊(てんじょうてんがゆいがどくそん)」とおっしゃったそうです。これは「世の中の中で私が一番尊い」という意味ではありません。「生きとし生けるもの全ての命はそれぞれがとても尊い命である」という意味です。私達はとても大きな命のつながりの中で生きています。ご先祖様の誰一人が欠けても自分はここに存在しません。また私達が生きているという事は沢山の命によって生かされている事でもあります。顔も名前も知らない人もそうです。植物や動物もそうです。勿論、自分自身も自分の為だけに生きている訳ではなく、他の為に生きているという事でもあります。それぞれの命がお互いに生かし、生かされ合い、生きているのです。その命の尊厳をうたった言葉が「天上天下唯我独尊」なのです。


お釈迦様のエピソードはまだまだ沢山ありますが機会がありましたらまた書きたいとおもいます。

2014年4月2日水曜日

花まつり

4月8日はお釈迦様の誕生日です。この日のお祝いに多くのお寺では「花まつり」という行事がおこなわれています。この名前の由来はお釈迦様がお生まれになったルンビニーの花園から来ています。その為、この行事では、沢山のお花を飾った誕生仏(生まれた時のお釈迦様の姿)にお参りします。

もう一つ、花まつりに欠かせないアイテムとして、甘茶があります。これは砂糖入りのお茶ではなく、ユキノシタ科のアマチャやウリ科のアマチャズルを煎じた飲料です。麦茶のような色をしてちょっと甘苦い味がします。お参りに来た人はこの甘茶を誕生仏にかけます。お釈迦様が生まれた時、天から龍王が現れ、甘露の雨を降らし、お体を清めた事がこの由来です。またこの行為から初めは花まつりを「灌仏会(かんぶつえ)」と呼んでいました。「仏様に甘茶を灌(そそ)ぐ行事」という意味です。花まつりは明治時代につけられた名前です。最近ではこの甘茶を参詣者に振る舞うお寺もあります。飲まれる機会があれば、お釈迦様が生まれてきてくれた事に感謝の気持ちを込めながら飲みましょうね。ちなみに常光寺ではお花の種をお配りしています。


余談ですが、失敗して物をダメにする事を「オシャカになる」という言い方で表す事がありますね。実はこれも花まつりの日に因んでいるという説があります。昔、江戸の鍛冶職人があぶり過ぎて鈍ってダメにしてしまった金物に対して、江戸っ子訛りで「しがつよかった(火が強かった)」→「4月8日だ」→「お釈迦様の誕生日」というつながりで成立したそうです。


またお釈迦様は蓮の花の上に乗っておられます。蓮の花は泥水が濃ければ濃いほど大輪の花を咲かせます。真水のような綺麗な水の中では、蓮の花は小さな花しか咲かせません。蓮の花が立ち上がるにはものすごく汚い泥水が必要なのです。泥水を人生に置き換えると、辛い事・苦しい事・悲しい事です。蓮の花が咲く事は、まさに人生の中で花を咲かせる事、そしてその花の中にある実が「悟り」なのです。辛く苦しく悲しい思いと経験がなければ、人間は悟る事ができない、とお釈迦様は教えたかったのでしょうね。

次回ももう少しお釈迦様について書いてみたいと思います。