2014年7月19日土曜日

お盆の準備

前回に引き続きお盆についてのお話です。
【お盆の準備】
地方によって、内容は様々ですが、基本的なことについて書いていきます。

[お盆の供養]
仏様をおもてなしする為に、ご自宅では精霊棚(しょうりょうだな)の上に、真菰(まこも)を敷き、位牌を中心にし、仏具、お花、季節の野菜や果物、菓子、霊供膳(りょうぐぜん)、精霊馬、素麺等を供えます。昔は内庭や座敷に大きな精霊棚を作っていましたが、現在では仏壇の前に小さな台を置いてお飾りするのが一般的です。
霊供膳は仏様に精進料理を差し上げるお膳です。それぞれの器には飯椀(ご飯)、汁椀(お吸い物・味噌汁)、壺椀(煮豆・ゴマ和え)、平椀(煮物)、高杯(漬物・酢の物)をお供えするのが一般的です。霊供膳はお盆だけでなく、普段の仏様へのお食事にも使いますのでこの並べ方を覚えておくとよいですね。
精霊馬は割り箸を刺して足に見立てたキュウリの馬とナスの牛の方が馴染みがあるかもしれませんね。これは「仏様が足の速い馬に乗って帰って来て頂き、帰って行く際には牛に土産物をのせてゆっくりと帰って頂く」という供養の心を表わしています。
素麺は「喜びを細く長く」という縁起をかついでいます。

[盆提灯]
この習慣は鎌倉時代から行われており、仏様が迷わず帰ってくる目印の灯りとして、精霊棚やお仏壇の両脇に一対、二対と飾ります。形は吊り下げ型、置き型、最近では現代風の提灯もありますのでお好みに合ったタイプをお飾り下さいね。
また初盆(故人が亡くなって四十九日の後、初めてむかえるお盆)の際に、初めて帰ってくる故人の霊が迷わず自宅に辿り着けるように、玄関や軒下(マンションの場合はベランダに飾る場合もあります)に飾る白い吊り提灯を『白紋天(しろもんてん)』といいます。家紋を入れたり、仏様の御戒名を入れる場合もあります。
昔は初盆では、白紋天を故人のご家族が購入し、普通の絵柄の入った盆提灯は、兄弟・親戚などから送られていました。最近では、親戚や故人と親しかった方々のお供え物は様々ですが、盆提灯はお供えとして最高のものとされています。

[迎え火・送り火]
十三日の夕方に盆提灯を灯します。その後、家の門口や玄関先で素焼きの焙烙(ほうろく)にオガラと呼ばれる皮をはいだ麻の茎を折って積み重ね、火をつけて燃やしその場で合掌します。これを迎え火といい、オガラを燃やした煙に乗って仏様が家に戻ってくるのを迎えます。また十五(十六)日には、仏様が無事にお帰り頂けるように同様の方法で送り火をたきます。有名な京都の大文字焼きも送り火の一つです。送り火ではなく、お盆のお供えを精霊船や真菰に包んで海や川に流す精霊流しをする地域もあります。

2014年7月13日日曜日

お盆について

【お盆とは?】

正式には『盂蘭盆会(うらぼんえ)』といい、7月13日から15(16)日までの期間に、生前過ごした家に帰ってくるご先祖の霊や、亡き近親者の霊を迎えて供養する行事です。これはインドの言葉の一つ、サンスクリット語の『ウラバンナ』を漢字で音写したもので、「逆さ吊り」という意味を持ち、由来は『盂蘭盆経』の教えからきています。
お釈迦様の弟子である目連尊者(もくれんそんじゃ)という方が、ある時亡き母が餓鬼道に落ち、逆さ吊りにされ苦しんでいる事を知り、お釈迦様にどうしたら母親を救えるのか、と相談しに行きました。お釈迦様は「お前が多くの人に施しをすれば母親は救われる」とおっしゃり、目連尊者はその教えに従い、夏の修業期間の明ける7月15日に、多くの修行僧達に飲食物を捧げて供養しました。すると、その功徳によって母親は餓鬼の苦しみから逃れ、無事成仏する事ができた・・というお話です。それ以来7月15日は父母やご先祖様に報恩感謝を捧げ、供養をつむ重要な日となりました。

日本で最初の盂蘭盆会が催されたのが推古14年(606年)。元々は旧暦の7月15日前後でしたが、明治時代に新暦が採用され、7月15日では当時国民の8割を占めていた農家の人々にとって繁忙期と重なってしまう為、ひと月遅らせて、ゆっくりとご先祖の供養ができるようにしました。現在も東京以外の殆どの地方がこの『月遅れの盆』を取り入れています。※お盆の期間は地方によって異なります。

次回はおうちでのお盆の供養の仕方などについて書いていこうと思います。

2014年7月2日水曜日

仏花について

今回はお仏壇やお墓に供えるお花『仏花』について書いていきます。

花は仏教の六波羅蜜(ろくはらみつ)の忍辱(にんにく)〈様々な苦難や他者からの迫害に耐え忍ぶ事〉に通じ、自然界の厳しい環境に耐えてようやく咲く姿、また供えられた後も耐え忍んで咲き続ける姿から、人間が仏様に対する修行(忍辱)の誓いとして活けるといわれています。
ただ、その考えでは「なぜお霊供膳(おりょうぐぜん)〈なくなられた方々の霊魂にお供えするお膳の事〉のようにお花は仏様の方を向かないの?」という疑問が出てくると思います。これにはお花を飾るもう一つの理由に繋がります。花は万人に愛されるもので、生活に潤いをもたらせる存在でもあります。病人の沈みがちな心を和ませたり、野の草花に心が洗われる方も多いと思います。美しいものの例えにもなり、『花嫁』という言葉もそこからきています。また敬愛や感謝の代弁者ともいえ、お祝いに花束が贈られたり、求愛のしるしにも使われますね。ここで・・・何かお気づきになりませんか?このように沢山の人々の心を動かす花は仏様の教えである本来私達があるべき姿に通じるのです。つまり、活けてある美しい花を見ることで、私達が仏様に近づいていけるように・・という意味があるのです。
皆さんは『荘厳(そうごん)』という言葉をご存知ですか?「重々しく立派・おごそか」等の意味を持ちますが、仏教では同じ字を「しょうごん」と読み、これは本堂や仏様を仏具等で飾る事をいいます。例えばお寺の本堂に足を踏み入れると、誰でもが厳粛な気持ちになりつい手を合わせてしまうのは、荘厳さがあるからです。これは仏様へのお供えではなく、仏教の世界を表わしています。つまり、その中でお花は欠かせない重要アイテムなのです。ですから仏花は枯らす事のないようにいつも気を配っておきましょうね。

お花を生ける本数は大体奇数が理想的です。基本的にお供えするお花は決まってませんが、毒花や悪臭を放つ花・バラのように棘のある花は避けて下さいね。また、悲しみの時は赤色等の派手な花も避けて下さい。昔は、庭先のお花を飾るご家庭が多かったのですが、現在の住宅環境ではお庭がたとえあっても一年中花が咲いているという事は難しいと思います。現代の技術では多種多様なお花が販売されていますが、なるべく生前故人が好きなものであったり、四季折々のお花を心を込めて飾ると良いですね。